どうも、太陽です。(No24)
エンタメ産業の未来について、エンタメ社会学者の著者が書いた「推しエコノミー」を参考にしてまとめていきたいと思います。
推しエコノミーはある意味、オタク産業とも言えます。
この記事で扱うエンタメ産業は、アニメ・ゲーム・映画・出版としています。
で、以下の記事によると、アニメオタクが人数では首位で、2位にマンガ(出版)、3位にデジタルゲーム、4位にアイドルが4位、5位にライトノベル(出版)、8位に声優です。
https://news.livedoor.com/article/detail/23250526/
アニメオタクは685万人 漫画抑え首位、民間推計
オタクの分野別人数と年間消費額は以下です。

また、以下の記事によると、推し活に月に1〜5万円を使う人が15%もいるそうです。
https://www.asahi.com/articles/ASR146W7CR14UTIL018.html?ref=tw_asahi
推し活、月に1~5万円使う人が15% 「人生が豊かに」45%
1万円未満が8割弱で圧倒的多数で、5万円以上は7%です。
まさに、推しエコノミーであり、経済圏です。
興味がある人は続きをお読み下さい。
1 エンタメ産業の現在。
エンタメ産業とは、アニメ・ゲーム・映画・出版を指すこととします。
(そこに国外合わせて、TV局や映画・音楽会社などが絡んできます)
まず、ゲーム業界を紹介します。
a ゲーム業界。
約3000万〜4000万がプレイするのがモバイルゲームアプリ市場です。
で、500万〜1000万人はゲームプレイではなく、他人のゲームプレイの視聴をしています。
Twitchは月間300万人のアクティブクリエイターがいて、50万人のユーザーがいます。
Discordというゲーム専用通話アプリは、100万人程度のユーザーがいます。
日本ローカルのゲーム視聴・配信サービスとして、ミラティブがあり、ゲームの配信者300万人がいます。
ところで、2020年のゲーム関連事業売上は、ソニーが約2.5兆円、任天堂が1.8兆円、マイクロソフトが1.2兆円です。
ソニーはプレイステーションプラス(PSP)という定額制サブスクを作っています。
で、2020年末には有料会員数は4740万人に達しています。
(月額850円なので、年間約5000億円の収益)
任天堂のSwitchオンライン2020年9月時点で2600万人の有料登録者を獲得しています。
マイクロソフトの有料定額サービス「Xboxゲームパス」は2021年1月時点で、1800万人が登録しています。
つまり、日本国内の家庭用ゲーム市場は低迷しています。
ですが、海外も含めた家庭用ゲーム市場と、オンラインのサブスクを加えると、家庭用ゲーム業界もまだまだ飛躍しているのです。
ゲーム業界ではライブ化も進んでいます。
で、2020年オンラインシューティングゲーム「フォートナイト」で行われた、ミュージシャン、トラビス・スコットのライブは1230万人が同時視聴しました。
さらに、音楽ライブとしては史上最大の観客動員でした。
21世紀に入ってから、出版・音楽・TVが凋落する中で、ゲーム市場は盛り上がりを見せています。
そして、エンタメ業界を牽引するとして期待されています。
テレビ・ホームビデオの20兆円、新聞・雑誌市場や広告市場の10兆円、音楽市場の7兆円があります。
で、ゲーム市場は2025年には30兆円に成長すると予想されています。
さて、フォートナイト、PUGB、荒野行動、Call of Duty:Mobileなど「バトルロワイヤル」と呼ばれるシューティングゲームが大人気です。
荒野行動というアプリゲームは、3500万人いる日本のアプリユーザーのなかで、1年で2500万ダウンロード達成しました。
ゲームフレンド同士で協力関係を築く必要があるので、ゲーム内におけるカップルが増えました。
で、2018年には1年間で86万組のゲーム内カップルが成立しました。
(ちなみに、日本の年間結婚数は60万組弱です)
一部のゲームアプリは儲かりまくっています。
ですが、プレイヤーのほぼ8〜9割は無料でプレイしています。
そして、収益は1〜2割のプレイヤーが「時間短縮、アイテム利用などへの課金」によって集めているに過ぎません。
また、この15年間でモバイル・家庭用など、デバイスの変遷がありました。
その中で、ゲーム人口全体は5000万人規模とずっと維持されてきたのは重大事です。
この5000万人向けのゲームコンテンツの戦い方は、エンタメ業界の戦い方と似ています。
人口も可処分所得も減る市場の中で、いかにして商品を変えながらユーザーとの関係性を保っていくか、です。
つまり「変えながら変えない」形を貫き、いかに多くの人を囲い込み、いかに多くの人の視線を奪うか、です。
これと対照的な戦い方が以下です。
米国や中国企業が得意とする、どんどん領地を広げるかのように、対象国・地域、ユーザー層を広げていくやり方です。
さて、「ゲームの運営」という考え方は日本で異常発達しています。
300人近くのエンジニアがゲームを作り、ゲーム内のイベントもそのまま300人が設計し、日々コンテンツを進化させています。
つまり、労働集約的な職人型のデジタルサービス(ゲームの運営)なのです。
(アメリカでは、プロジェクトが終わればチームは解散しますが、日本ではずっと同じチームで運営します)
ところで、ウマ娘というアプリが日本で大人気です。
普通のアプリのユーザーの平均プレイ時間は1日87分です。
対して、ウマ娘の平均プレイ時間は1日133分(2時間以上)であり、通常の1.5倍ほど長く遊ばれています。
ウマ娘は月100億円、年1000億円クラスのトップタイトルです。
ですが、これクラスのアプリには以下があります。
名称。 | 配信開始日。 | 開発会社。 | |
・ | パズル&ドラゴンズ(パズドラ) | 2012年2月。 | ガンホー・オンライン・エンターテイメント。 |
・ | モンスターストライク(モンスト) | 2013年10月。 | ミクシィ。 |
・ | Fate/GrandOrder(FGO) | 2015年8月。 | アニプレックス。 |
国内のアプリゲーム市場は2018年頃に1.2兆円の天井で「もう伸びない」と思われました。
ですが、ウマ娘の成功で覆されそうです。
パズドラは2012年から2020年までで約9000億円の売上を挙げています。
で、1つの覇権アプリが1兆円規模の生涯経済圏を生みだすので、アプリ業界でのゲーム開発ラッシュが生じるのも仕方ないです。
b アニメ業界。
アニメ市場はパチンコなどの派生ビジネスも含めると、年間2.5兆円市場になります。
(狭義のアニメ市場になると、年間約3000億円です)
毎年約200本以上の新規アニメ作品がリリースされますが、8〜9割は赤字です。
アニメビジネスの内側の仕組みや関連会社などはかなり複雑なので、詳しくは「推しエコノミー」という本を読んで下さい。
年間数百本のアニメの5割がTOKYOMX、2割がテレビ東京で放送されています。
で、フジ・日テレ・TBS・テレ朝の4大キー局では合計2割強という割合になります。
1本2〜3億円で作られるアニメにとっては以下の状態になっています。
つまり、4大キーTV局の波代(数千万円する。30分枠をおさえる電波料)やCM枠代の負担と、局印税も含めると、採算が合わないのです。
だからこそ、安いTOKYOMXやテレビ東京を狙います。
(深夜でも見てくれる青年・壮年のアニメファンがターゲットなので十分なのです)
また、TV局は今や、お金を稼ぐところではなく、認知してもらうものとアニメ会社は思っているのです。
鬼滅の刃が典型例です。
テレビ放送だけじゃなく、インターネット配信のおよそ14のサイトにも流しましたからね。
鬼滅の刃はネット配信にアーカイブがありながら、TV局はお金を出し、1年以上後に放送しました。
ですが、TVはライブとしての機能を果たし、ツイッターでも盛り上がり、視聴率も20%を超え、高視聴率でした。
TVはもはやアニメを広げる役割としては弱いのです。
他のチャンネル(配信、電子書籍、アプリなど)から人気を得る形になっています。
(2010年代、トップアニメの視聴率でも5%前後です)
アニメ業界の潮流として、脱テレビであり、Netflixにもアニメは流れています。
日本のTV局もうかうかしていられない時代となりました。
ところで、日本全体で年間1300億円の映像パッケージ市場であります。
ですが、上記で挙げたウマ娘のブルーレイディスク(BD)の売上は、約100億円規模となります。
そして、市場の約1割弱を占めており、驚異的だと言えます。
アニメジャンルのパッケージ市場300億円でいうと、3分の1も占めます。
加えて、家の本棚にBDが並ぶと、所有と想起現象が表れ、ゲームアプリを何度も開かせる効果があります。
ついには1万円かけてフィギュアなどのグッズを買います。
で、それだけのお金をかけたというサンクコストとなり、ウマ娘から離れられなくなるのです。
c テレビ業界など。
コンテンツを制作する費用は3.4兆円規模です。
ですが、その約半分(1.7兆円)はTV番組の映像コンテンツであり、1000社近い企業が制作しています。
残りの制作費は新聞が7000億円、ゲームが2000億円、雑誌・ラジオが1000億円、音楽が700億円です。
僕はTVerで、過去の番組を有料サブスクで公開すれば、有効活用できると思っていました。
ですが、タレントや事務所など個々に確認を取り、全ての人に了承されなければ放送できず、意外と難しいことが分かりました。
TVは今や、祭りをお茶の間で起こすライブとして生き残るのが筋だということです。
「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」や半沢直樹はツイッターで大いに盛り上がりました。
この時間しか流れないという共有エンタメです。
さらに同時にみんなで見てツイートで叫ぶライブ感が、TVという決まった場所に座って見る弱点を、逆に利点とする手法なのです。
(ネット配信はいつでも見れますから、共有エンタメ機能はないのです)
ライブ感を演出するとしたら、ドラマやスポーツ、ニュースなどライブ性の高いコンテンツが有効でしょう。
(逆に、バラエティやアニメや情報番組はライブに合わないので、アーカイブ化すべきです)
ところで、コロナ禍で、ゲームは20%増、動画配信は30%増、電子マンガは20%増と追い風を受けたかと思いきや、以下の状態にもなりました。
つまり、アニメは10%減、テレビは20%減とダメージを受けた業界もあります。
特に、アナログのコンテンツは悲惨の一言です。
例えば映画市場は2019年は2000億円に達したのに、2020年は4割減の1500億円まで下がりました。
舞台演劇(演劇・ミュージカル・演芸)の市場は2019年の2000億円が、2020年に600億円と7割減です。
音楽ライブは2019年の4200億円から2020年は700億円へと8割減となっています。
有料音楽ライブ配信は年間448億円の市場になりました。
ですが、元々の4200億円市場の約1割をカバーしたに過ぎません。
2 タイムパフォーマンスという視点。
加えて、ユーザーはタイムパフォーマンス(時間対効果)、つまり、時間に対して敏感になっています。
映画は1800円を払って2時間視聴します。
で、割引チケットやレイトショーなどを含め1人が平均で1600円を払っているとすると、1時間あたり800円のコンテンツです。
スポーツも映画も1時間あたり800円です。
で、トップアーティストの音楽ライブやブロードウェイミュージカルになると、1時間あたり5000円という最高額になります。
エンタメに限らず、ダイソーの平均滞在時間は30分、平均購入単価は500円です。
なので、1時間あたり1000円のコンテンツです。
で、ドン・キホーテやダイソーなど、人々と商品との出会いを演出するのは単なる購入以上の価値を提供しており、エンタメなのです。
お金を払わなかったとしても、滞在して視聴・体験するのはユーザーとしては消費している状態です。
視聴無料だとして、その広告に費やされた投資額とユーザーが費やした時間をもとに、1時間あたりのコストを分析した研究があります。
以下のようになっています。
・ | 北米のテレビ | 毎年5000万時間が費やされているが、時間あたり0.2ドルしか生み出していない。 1時間みても20円程度の経済価値。 |
・ | 北米の新聞。 | 100点程度の経済価値。 |
・ | 北米の本。 | 500円程度の経済価値。 |
また、音楽・本・新聞・テレビのすべてのメディアの1時間視聴あたりコストは20年にわたってほとんど変化していません。
(GDPあたりで広告費をどのくらいかけているかもずっと一定)
1時間の視聴価値(=1時間視聴してもらって生み出せる消費価値)が変わらないとすると、以下のようになります。
ユーザーがこれだけ目移ろいして消費の回転が速くなるのは、「ネット普及によるコンテンツの供給過多」が背景にあるからです。
メディアにかける消費時間自体は増加しています。
2000年に毎日7時間だったテレビ中心のメディア視聴は、2020年時点ではネット中心で10時間近くになっています。
メディア視聴が1.5倍になったのに、視聴あたりの消費単価が伸びていないのは、以下だからです。
無料で視聴できるが経済的に有効でないものに対する時間消費だけが伸びており、それがGDP還元されていないということを意味します。
広告が多すぎて視聴が購入につながらに上に、ネットの低単価広告がそれを助長しているのもあります。
さらに、好きで追いかけていたのにコンテンツ自体が終わる「作品寿命の短命化」も原因でしょう。
ともかく、情報氾濫時代において、ユーザーが「自分の視聴時間の投資対効果」を気にかけているのは事実なのです。
YouTubeもAmazonPrimeも基本は1.5倍速視聴です。
また、複数のウィンドウを使って2本同時視聴もします。
さらに、新しい作品をみるときは結末までのダイジェスト動画やまとめサイトでユーザー反応を掴んだ上で、駄作でないことを確認してから視聴に入る人もいます。
ユーザーがこんなにも必死にコンテンツを見るのは「エンタメは教養であり、SNSに安心してさらせるコンテンツだから」と著者はいいます。
自分自身のアイデンティティとしての、よそゆきの服のように他人からの視線によってコンテンツを選ぶようになりました。
しかし、SNSがソーシャル化しすぎており、エンタメは安心してさらせるコンテンツでもあります。
ユーザーはFOMO(Fear of Missing Out)やJOMO(Joy of Missing Out)といったキーワードでコンテンツに接しています。
詳しくは本をお読み下さい。
団塊ジュニア以前の世代はテレビを1日に2.5〜4時間見るのに対し、モバイルは1時間程度と少ないです。
Z世代は1.5時間程度のテレビ消費に対して、モバイル・タブレット視聴は4時間程度となっており、完全に逆です。
ミレニアル世代はちょうどその中間点に位置しています。
「推しエコノミー」という本の序盤の内容を要約しました。
強烈に推せる本です。以下、短文書評です。
「「推しエコノミー」4点。
エンタメ社会学者の著者の本。
著作もたくさん出している方。内容は傑作である。
エンタメ業界(ゲーム、アニメ、映画、出版)に関わっている人はぜひ読んだ方がいい。
過去から現在、未来までのエンタメの姿が著者の独自の分析により、垣間見れるであろう。
エンタメ業界に対する見方が一変するかもしれない。
まぁ僕がエンタメ業界にそこまで詳しくなかったからこそ、未知の知識だらけで興味深く読めた可能性はあるが。
エンタメ初心者には高得点がつけられる本であり、オススメ。

激オススメだよ。
PART2に続きます。


ではこの辺で。(6120文字)
このブログは個人的見解が多いですが、本・記事・YouTube動画などを元にしつつ、僕の感性も加えて、なるべく役立つ・正しいと思われる記事を書いています。
あくまで読者がさらに深く考えるきっかけとなればいいなぁという思いですので、その辺は了解ください。
参考・引用文献。
コメント